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2016年03月15日

シュラフの中の酸欠

シュラフの中の酸欠

 冬のキャンプにおいて、テントの中の酸欠問題は気をつけようというのは良く聞く話だ。冬のキャンプではテントの中で暖房器具を使う事もあるし、調理用の火を使う事もある。積雪の量次第では外からテント内への酸素供給量が少なくなるという事もある。必然的にテント内の酸素濃度や一酸化炭素に気をつけねばならなくなる。

 酸素濃度については、どういう時に酸素濃度が下がるのか、火を使う際に酸素濃度が低下しているとどの様な現象が起こるのかを理解しておく必要がある。
 一番気を付けねばならないのは、テントのベンチレーションが機能しているかという点で、空気がどこから入りどこから排出されるのか、その流れを意識して持続させなければならない事だ。テント設営後に雪が積もって口が塞がれ、ベンチレーションが機能しなくなるというのも良く聞く話だ。降雪が激しい場合は、テントの周りを何度か除雪しなければならなくなる事もある。つまり、常に空気が取り込まれは出て行く環境を守ってキャンプをする事が重要だという事だ。
 では、酸素濃度が下がるとどの様な事が起こるのか。酸素濃度が低下した状態で火器を使うと、不完全燃焼によって一酸化炭素が発生する。この一酸化炭素で中毒症状を起こしてしまい、場合によっては死ぬ事もある。一酸化炭素中毒は、薪ストーブや炭を使う人の中では常識だが、普通のガスストーブや灯油ストーブでも同じように気を付けねばならない。
 その理屈はこうだ。物が燃焼するには酸素が必要で、物が燃えた際には炭素と酸素が結びついて二酸化炭素が排出される。酸欠環境にあると、酸素の供給が足りずに二酸化炭素ではなく、炭素と酸素の化合物は一酸化炭素として排出され、これが中毒症状をもらたす。薪ストーブや炭を使っていなくとも、何かを燃焼させるという事が一酸化炭素中毒のリスクであるという事だ。
 一酸化炭素中毒は自覚症状が薄い為、気付いた時には既に危ない状態になっている事が多いという。本当に気を付けねばならない。携帯用の一酸化炭素警報機も売っているので、テント内で火器を使い続けるようなキャンプをする場合は持っておいた方が安全だ。当然ながら私も持っている。また、酸欠状態で燃焼している時の炎の色が青ではなく赤になる点でも観察する事が出来るので、これも知っておいて損はないだろう。

 今日は久しぶりに妻と二人で雪中キャンプに来ている。私は雪中キャンプが好きだから良く一人で行っているが、妻は寒いのが嫌いだというので、殆ど連れてきた事はない。今回は珍しく一緒に行きたいと言い出して少し驚いている。しかし二人きりでテントの中で過ごすのも悪くは無い。
 今は大した降雪はないが、深夜に向けての積雪量が凄いというニュースがラジオから流れている。今日来ているTキャンプ場は通年利用出来るキャンプ場だが、ニュースで激しい積雪になる事を煽っている為、私たち夫婦を含めて2つのテントしか張られていないようだった。この状況でやるという事は、私たち夫婦は物好きなキャンパーという事になる。

 夕食は、テントの前室で鍋をする。広々とした前室ではないが、大人二人が座ってゆっくり出来る程度の広さはある。ここにテーブルとイスを配置し、反射式のストーブで暖をとってぬくぬくしながら鍋をつつくのだ。
 キャンプでは、私が調理担当なので材料の準備から調理までを行った。今回はきりたんぽ鍋だ。私の住む関東ではあまり売っていないが、これは出張で秋田に行った際におみやげとして買ってきたものだ。比内地鶏のスープに根付きセリ、そしてきりたんぽ。体が温まる上に腹も膨れる。燗をつけた日本酒との相性も最高だ。酒が旨くて、どんどん飲めてしまう。あっという間に一升瓶の2/3ほども無くなってしまった。
 酒に酔ったのか、妻の頬もピンク染まって、心なしか目も潤んで見える。私たちは30過ぎの夫婦で子供も居ないが、妻への愛情が薄れた訳ではない。出張の多い私に代わって家を守ってくれていて感謝しているし、愛情だって感じている。照れくさくて決して口には出せないけれど。

 テントをサラサラと叩く雪が強くなってきた。テントの中に居るとストーブで暖かいし、外の様子が殆ど解らない。テントを設営してからだいぶ時間が経っているから、一度積雪の様子を見た方が良さそうだ。フライを開けて隙間から覗いて見ると、かなりの積雪量だ。フライのスカート部分がすっかり雪に埋まっている。雪の勢いがこんなに凄いと思わなかった。早急に除雪をしなければならない。
 防寒着を身につけ、スコップを手に持って外に出た。気温は低く、肌にビリビリと刺さる。風は殆どない。音も無く雪だけがしんしんと降っている。もうテントの1/4が雪に埋まってしまった。フライの隙間が雪に埋まってしまうと、換気能力が落ちてしまう。スコップで雪をかく。サラサラの雪なので重さは無いが、これだけの量を除雪するというのは一仕事だ。テント周りの半分を除雪した所で、ハァハァと息切れしてしまった。この雪の様子ならば、また除雪しなければならなさそうだ。
 除雪を終えてテントに入ってきた私を見て、妻はぎょっとしていた。私が雪だるまのように雪まみれだったからだ。酒を飲んで体を動かした所為か、暖かいテント内に戻ったら酔いが急に回ってしまった。私は酔うと眠くなってしまう。
 雪によって換気機能が落ちると酸欠になってしまう事、一酸化炭素中毒の危険性を妻に説明し、朝までにもう一回の除雪が必要である事を妻に告げ、私は先に休む事にした。妻にテント周辺の除雪をさせるつもりはない。雪の様子を気にかけながら寝るしかない。

 シュラフに入り、目を閉じる。妻の居る前室からは小さな音のラジオが聞こえている。妻の時間を邪魔をしない様に、耳栓をして寝る事にした。耳栓越しにかすかに聞こえるラジオの音のようなノイズを聞いて居たら、眠りに落ちていった。

 突然、息苦しくなって目が覚めた。シュラフの中で丸くなって眠っていた為か、シュラフ内の酸素濃度が低下し、酸欠になってしまったようだった。こういう事は冬は寒いので、実はよくある。冬のシュラフは分厚くて空気が逃げないようになっているし、寝る時の体勢も寒くて丸くなってしまいがちで、シュラフの中だけで呼吸を繰り返す事で酸欠になってしまうのだ。これによって子供が酸欠で亡くなるという事故もあったそうだ。
 ハァハァと激しい運動後のような呼吸の状態から何回か大きく深呼吸して、また酔いに任せて目をつぶった。
 このシュラフに潜り込んでは、シュラフ内が酸欠になって目を覚ますというのを何度か繰り返した。シュラフの隙間から鼻と口だけを出して寝に入るのだが、また息が苦しくなって、突然目が覚めてしまうのだ。何とも懲りない。

 何度かこれを繰り返した後、ぼうっとした意識の状態で目が覚めた。息苦しさもあるが、先ほどまでは無かった吐き気と激しい頭痛がする。強いめまいもする。朦朧として体が動かない。
 耳栓を通して、ピーピーピーというくぐもった電子音の音がかすかに聞こえるが、何の音か思い出せない。けだるいのに筋肉がこわばったようになって体を動かせない。声を出したくても、口の中がいやにネバついて開かない。妻はどこにいったのだ。
 眠くて眠くて仕方がないので、このまま寝る事にする。


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